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3対1の攻撃 正しい戦術行動

後半のアディショナルタイム4分、遠藤選手のパスカットからカウンター攻撃が始まったものの、まともなシュートも打てずにこの攻撃は終結してしまい、Samurai Blueは4点目の追加点を奪えなかった 出典:DAZN
後半のアディショナルタイム4分、遠藤選手のパスカットからカウンター攻撃が始まったものの、まともなシュートも打てずにこの攻撃は終結してしまい、Samurai Blueは4点目の追加点を奪えなかった 出典:DAZN

どうして右へパスするの?


 2024年1月31日、アジアカップのラウンド16の試合で日本はバーレーンと対戦し、3対1で勝利を収め、準々決勝へと駒を進めました。

 試合は72分の上田綺世選手の得点により2点差がつき、ほぼ試合は決まったと言える流れとなります。その後アディショナルタイムが10分追加され、その中で問題と思われるシーンが発生しました。

 

 まずは、そのシーンを連続写真で振り返ってみたいと思います。(動画は著作権上の問題があり、ここに掲載することはできず、またDAZN(もちろん視聴契約済み)の画面をスクリーンショットで撮影すると真っ黒な画面しか撮れないため、モニターに映し出した映像をカメラで撮影していて、画像の質があまりよくなく見にくいと思いますが、どうかご容赦ください。)

中央でボールをドリブルしているのが浅野拓磨選手、右サイドを並走しているのは南野拓実選手、同様に左サイドを走っているのは三苫薫選手 出典:DAZN
中央でボールをドリブルしているのが浅野拓磨選手、右サイドを並走しているのは南野拓実選手、同様に左サイドを走っているのは三苫薫選手 出典:DAZN
浅野選手はドリブルのツータッチ目で、すぐに右サイドの南野選手へボールを渡す 出典:DAZN
浅野選手はドリブルのツータッチ目で、すぐに右サイドの南野選手へボールを渡す 出典:DAZN
パスを受けた南野選手は、ボールがやや長過ぎた(速過ぎた)ため右へ膨らんでボールへ追いつき、反対サイドの三苫選手へパスを出す 出典:DAZN
パスを受けた南野選手は、ボールがやや長過ぎた(速過ぎた)ため右へ膨らんでボールへ追いつき、反対サイドの三苫選手へパスを出す 出典:DAZN
ゴール前でボールをもらう三苫選手はパスが浮き球で、しかも背後から相手DFが迫って来ているため、トラップを省きサイドヴォレーでダイレクトにシュートを狙う 出典:DAZN
ゴール前でボールをもらう三苫選手はパスが浮き球で、しかも背後から相手DFが迫って来ているため、トラップを省きサイドヴォレーでダイレクトにシュートを狙う 出典:DAZN
サイドヴォレーをパスされたボールのバウンドにうまく合わせられず、三苫選手が蹴ったボールは自身の頭の上に上がり、ボールはゴール方向へは飛ばなかった 出典:DAZN
サイドヴォレーをパスされたボールのバウンドにうまく合わせられず、三苫選手が蹴ったボールは自身の頭の上に上がり、ボールはゴール方向へは飛ばなかった 出典:DAZN

3対1の基本戦術行動


 どうでしょうか?このシーン、思い出せましたか?動画ではないので、写真と写真の繋がりが良く掴めないかも知れません。DAZNの視聴契約をされている方は、是非2時間26分6秒(02:26:06)から再生して、このシーンを振り返ってみてください。

 

 さて本題に入りますと、私がこのシーンで一番問題だと思うのは、生放送を見ながら『えっ?』と思ったことは、3人のFWが攻撃を仕掛けていて、真ん中のボールを持っている選手がいとも簡単に外側(このシーンでは右側)へボールを渡してしまったことです。


 一人で守っているバーレーンの選手にしてみると、唯一できることと言えば何がしかを行い(何をするのか?は、不明!)ともかく時間稼ぎをすること、つまり味方選手が戻ってくる時間を勝ち取ること、それからこれは他力本願になりますが、日本チームの誰かがミスをするのを期待しその嬉しいハプニングを待つことだけです。

 もし真ん中でボールを持たれたままペナルティエリア近くまでボールの位置が進んでしまったとしたら、最悪です。日本チームは左右のどちらかへパスをして、シュートできます。さりとてたった一人のバーレーンの選手に、対抗する積極的な策はありません。ただひたすら、時間稼ぎと相手のミスを待つことしかないのです。


なんとなく、雰囲気やノリでプレーするのはやめよう!


 お分かりでしょうか?このシーン、真ん中の選手がもっと長くボールを持つべきでした。この状況でやりたいプレーは、ドリブルのスピードを意図的に上げ、バーレーンの選手へつっかけていくことです。一方的に1対1の場面を演出するのです。相手のDFがそれに反応したら、十分にボールへ近づいたら、その瞬間左右のいずれかで、より有利なポジションのFWへボールを配給し、シュートを打たせます。3対1の、絶対的に有利な数的有利な状況(ゴールチャンス)を、順当に使うことが大切です。

 3対1の状況で左右どちらでも、サイドに居る選手へボールを渡してしまうと、この上述したアドバンテージを失ってしまいます。それも自らの手で、いや足で。

 

 ではこのシーン、なぜ浅野選手はボールを右へ展開したのでしょうか?真実は本人に聞いてみないとわかりませんが、映像を見る限り彼の左後方からバーレーンの選手が戻って来るのが視野に入っていたため、左の三苫選手でもなく、真ん中の自分でもなく、右側に居る南野選手にボールを渡すことがベストな選択であると、判断を下したものと考えられます。

 

 右サイドを駆け上がりボールをもらった南野選手も、ボールを受けてからバーレーンのDFへドリブルでつっかければ良かったのですが、浅野選手からのボールがやや右へずれて届いたため、そのボールに追いついた所で自分自身でシュートまで持ち込むことは難しくなってしまい、ダイレクトに三苫選手へパスを出す選択をしたものと思われます。つまり、長い距離をスプリントしたので、ボールに追いついてからドリブルする体力が、きっと十分には残っていなかったのでしょう。

 

 DAZNで映像を良く確認した所、浅野選手が南野選手へパスをする直前(02:26:12)に、南野選手はボールを左へ回す合図を、左手を上げて浅野選手へ送っているようです。それはおそらく三苫選手の方がスプリントは速いし、ボールを持ってからのドリブルも速いので、自分よりもゴールできる可能性が高いと考えたのではないでしょうか?

 もちろん南野選手は、三苫選手と浅野選手の間を後方から戻って来るバーレーンの2人目のディフェンダーも、目に入っていたものと思います。左サイドは自分のサイドよりも条件は悪いが、三苫選手の優れた特徴(抜きんでたスプリント能力)を加味した場合、逆に左サイドでボールを動かした方がチャンスが濃いと、判断したものと思われます。


チャンスを逃さない、優秀な選手を育てましょう!


  以上、3対1における攻撃の戦術行動について、解説してみました。サッカーの練習において、3対2や3対3は良く行われるものと思います。それは、フィールド上で良く起こる場面だからというのが、そのシーンを繰り返し練習する理由です。

 では何故3対1の練習は行われないのでしょうか?それは圧倒的に攻撃側の数的有利により、シュートまで行くのはほとんど当たり前で、わざわざ練習する価値を見出せないからだと思います。

 しかしながら、今回取り上げたシーンではゴールへボールが飛ぶ、シュートらしいシュートを打つこともできず、この3対1の大チャンスは攻撃側の自滅により生かすことができませんでした。

 何故でしょうか?それは、3対1の絶対的有利な状況において、その有利さを生かす戦術眼を持ち合わせていないからです。例え圧倒的に有利な場面でも、気を配らなければいけない重要なポイントは存在します。残念ながら、状況が3対1であったことだけでなく、その状況をどう使うべきか?それを見逃してしまった、あるいは知らなかったのです。

 

 そういった内容をきちんと習得した選手たちを、これから(も)日本は育成していかなければならないと考えます。日本が世界でサッカー強国と呼ばれるようになるために!

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。もし何か皆さんのお役に立てることを、このブログで伝えられていたら嬉しく思います。