自動販売機が見当たらない!


ドイツと日本、2カ国の間で驚くほど違う、『えっ?そうなの?』の数々を一つ一つご紹介していきます


ドイツでは見かけない飲料の自動販売機(写真は、石垣島)
ドイツでは見かけない飲料の自動販売機(写真は、石垣島)

 日本ではもし外出中に喉が乾いたら、自動販売機を探し何かの飲み物を買い求め、立ったまま、あるいは歩きながら飲めばいいですね。公園などを近くで探して、ベンチに腰掛けて一息入れる人も居るでしょう。

 ドイツには、この自動販売機がありません。まったく設置されていないのです。信じられるでしょうか?

 

 その昔私が松本の山雅サッカークラブの試合をしてからデートしている最中では、彼女を乗せて車で移動しながらしょっちゅう自動販売機の前で止まり、夏であれば5〜7本飲んでいたことを思い出します。何回も飲み物を買うために車を止めていると、自動販売機にお金を入れている背中へ車の中から「ねぇ、もう止めたら。飲み過ぎだよ」との警告の声がしたものです。何れにしても便利ですよね。町中で飲み物が手に入れられるのは。(今の世の中であればさらに、どこへ行ってもコンビニが存在しています。)

 

 しかし、この行動をドイツではすることができません。何故なら、自動販売機が道端や街中に置かれていないからです。


喉が乾いた!さて、どうする?


日本では外出中に喉が渇いたって平気。実にいろいろな飲料が町中に溢れている
日本では外出中に喉が渇いたって平気。実にいろいろな飲料が町中に溢れている

 私がまだドイツに住んでいたとき、とある有名大学の教授が現地調査のためドイツを訪れたことがありました。1度目の調査の際は私の車で一緒に移動しましたが、2度目の調査の際には『どうせならドイツでの運転(右側通行)にも慣れたい』とのことで、教授も私もそれぞれ1台の車を運転して調査対象の施設を回りました。

 

 あるとき教授の車がガソリンスタンドへ入ったので、私も彼の車に続いてガソリンスタンドの敷地内へと入り、ガソリンを入れる必要のなかった私は敷地の端に車を止めました。てっきり教授はガソリンを入れるものと思っていましたが、車を降りるとすぐにレジのある建物中へ飛び込み、しばらくして出てきました。手にはコーヒーを2つ持っていて、「坂本さんも、どうぞ」と言いながら手渡してくれました。

 「ありがとうございます」と言って、コーヒーカップを受け取りましたが、こぼれた言葉とは違うことが私の頭には浮かんでいました『なんだ、喉が乾いていたんだ。だったら、言ってもらえれば、ドイツっぽい、教授が気に入りそうないいカフェかレストランへ入ったのに』。

 

 ドイツ人も車を運転しながら飲み物を飲むこともありますが、おそらくその多くは一人の場合(あるいはロングドライブのとき)であって、乗員が複数の場合は頃合いを見計らってみんなでカフェかレストランへ寄り、喉を潤しながら談笑するのが当たり前なのだと、ドイツで16年間暮らした経験からはそう解釈しています。

 常にサッカーに携わって、地域スポーツクラブに所属していた私としては、立ち寄る先の候補No. 1は、やはりクラブハウスでしょう。国民の2割が地域スポーツクラブの会員となっているドイツでは、スポーツに絡めてクラブハウスで喉を潤すことは日常生活の一部となっています。

 


自動販売機があれば便利?時間の節約?


ドイツでは喉が渇いたら、カフェかレストランへ入るしか手立てがない
ドイツでは喉が渇いたら、カフェかレストランへ入るしか手立てがない

 何故ドイツ人が日本のように、そこここに自動販売機を置かないのでしょうか?きっと町の景観を損ねてしまうのが嫌なのかも知れません。ドイツの歴史ある街並みの町では、外観のデザインをリノベーションの際に、他のデザインにはできない法律があると聞きます。内側はいくらでも変えても構わないけれども、外側は現行のものを維持することが求められています。

 

 でもそれよりきっと、人と話す時間を大切にしているように感じます。それに反して我々日本人は、個人の時間を大切にしている、と言えるのではないでしょうか。

 それはつまり前出の教授の現地調査であれば、移動中に車の中でコーヒーを飲めば、あるいは少なくともガソリンスタンドでコーヒーを飲めば、時間の節約になります。カフェやレストランへ入り、ウェイトレスやウェイターへ注文を通していたら、時間はもっと消費されてしまうからです。

 

 でも、そのときに思いました。もし教授と一緒にカフェやレストランへ入っていたとしたら、当然ながらその分対象物件を視察する時間は削られてしまいます。しかしながら教授と私が話す時間が生まれ、例えば私がこれから回ろうとしている施設の詳しい話をすることができたり、そしてもしかしたらその情報を聞いて、教授はその場で行き先を変更することを考えついたかも知れません。

 このように単純にコーヒーを飲む時間、移動せず留まっていたことで、一見時間を浪費しているだけのようにも見えますが、実はそこでは具体的な作戦会議を開くことが可能となり、教授の短いドイツ滞在期間をより有効に過ごすヒントが出てくる格好の機会が創出され、結果的には時間を節約することになっていたのかも知れないのです。

 

 イギリス人は、困りごとが発生したとき、こう言うそうです。「まずは一杯、紅茶を飲みましょう。それから考えてみましょう」と。

 すぐに問題解決に向かい奔走してしまう我々日本人は、どこか急ぎ過ぎてしまうきらいが強く、結局回り道をしていることもあるのではないでしょうか?